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クリムト論。

1年前の10月18日、ボクが初めてラスカルの公(きみ)とあったのは「静岡一揆塾」でのことだった。
そのことを記念して彼女から一冊の本が送られてきた。
『アール・ヌーヴォーの世界(3)色彩のエロチシズム‐クリムトとウィーン』である。
この本は学研から発行されている。1987年が初版。それから17年間で第19刷になっている。
人気がないとそういうことにはならない。世紀末、ウィーン、アール・ヌーヴォーの世界。そういうことと絡ませて作った本である。
ボク的にはドーンとクリムトの絵だけが載っている画集が見たい。ボクは絵でしか何も評価しない主義だからだ。
でも、画家の人生とかそういう背景になるものも知っておきたいというのもある。せっかくプレゼントしてくれたのだから、ぜい沢をいってはいけない。
それとボクは本を開くなりクリムトがどんな人だったのか、その自画像か写真を見たくて一番先にそこに目がいった。
なかなかクリムトの顔が見つからない。あった。猫を抱いている写真。すでに50歳を過ぎている頃のものか…。
頭は左右に髪が残っているが、真ん中ははげている。額の上にちょこっと髪がもうしわけ程度にあるだけ。
野球解説の掛布さんを想像してもらえればわかりやすいだろうか? ああ、これならクリムトは顔を出さない方がいい。
この人があんな絵を描いたとは、誰も思わない。落差がありすぎるからだ。まるで大工の親父さん、職人みたいな人である。
クリムトは一つのものに過去、現在、未来の三つを同時に見てしまう人間なのだ。
ところが絵の方はとんでもないのだ。ひとことでいうとクリムトは、女性のことを多面的に愛すことができた人である。
多面的とはそれをわかりやすい形で表現している一枚の作品がある。絵のタイトルは「女の生の三段階」。
生まれたばかりの女のコの赤ちゃん。それをやさしく抱きかかえている若き母親。その横には年老いた体の老女。
3人ともすべて立った姿でいずれもこれが裸なのだ。三段階とは幼児、20代、50代という年齢のことではない。
たしかにそれもあるがクリムトは一つのものに過去、現在、未来の三つを同時に見てしまう人間なのだ。
美しい女性に対してもそうである。そういえば「生と死」「花嫁」「希望(出産のこと。妊婦を描いている)」「乙女」「ベイビー(揺りかご)」という連作(?)がある。
女性に対しては「顔」と「目」と「裸」と「衣装」の四つの視点がある。顔と目は彼女たちの自意識のこと。裸(肉体)はそれとは別個に存在しているもの。
このアンバランスとギャップを愛することができるかである。あるいは女性の自意識と肉体の二つを同時にしかも平等に愛することができるかである。
クリムトは"できる"といって女の人を描き続けた。以上がボクがこの本を見た最初の印象である。
ターザンカフェより)
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