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家空っぽ |
5月7日(金)
さすがプロだ。感心した。この日、粗大ごみを片付ける業者が、午前10時にやって来た。3人だ。ひとりは道路の横につけた車に待機している。
運ばれてきたものを積み込む仕事。残りの2人が家から車まで運ぶ役。冷蔵庫、テレビが二つ、でっかい台所用のテーブル、大きな食器棚、ピアノ、仏壇、タンス、収納入れ、そして本棚が7つだ。
2階の書斎にあった木の本棚はどうやら窓から入れたようだ。階段からは降ろせない。
どうするのかと思っていたらぶち壊した。あっという間にバラバラに解体した。もうすべてはなれたものだ。
メンバーの中心人物である社長は42歳といった。若い。なんでも麻雀屋も経営しているそうだ。
もちろん競馬もやる。だが麻雀も競馬もさんざんやったことで飽きたという。オレ、全然、飽きないんだよなあ。
ピンク色の野球帽をかぶっていたら「テリー伊藤さんに似ているね?」と言われた。「テリーさんは友達だよ」。
台所の床の傷みはひどい。あと壁や柱のネコによるひっかき傷も目立つ。こりゃリフォームするのも大変だ。
神よ、私をもう一度、再生させたまえ
あ〜あ、ついにこの家ともお別れか。最初の9年を家族3人で暮らし、残りの13年を私がひとりで住んだ。
もう、どうでもいいや。そういう気持ちである。バカ野郎である。あらゆるものを放棄した。捨てた。
身軽になるためである。困ったのはビデオテープとカセットテープの多さだ。半端じゃないほど山のようにあった。
え〜い、こいつもまとめて処理してしまえだ。とっととうせろ。消えろである。過去と決別するしかない。
家を取られる、家を出ると決めたのが3月の半ば。それからずっとこの闘いが延々と続いている。いやあ、疲れた。
というよりも精神的にまいった。家を出ることと引っ越しをすることに莫大なエネルギーを使った。
人間にとって過去ほど重たいものはない。過去はそれ自体、強力な引力を持っている。それに引っ張られてしまうよな。
特に家族の写真がポロポロポロっと出てきた時には正直まいった。まるでドラキュラが十字架を浴びた感じだ。
何も変わっていないのは裏の木。21年間で7、8メートルまで伸びる大木になっている。
一方、小さな庭には今年も憎たらしい色をした毒だみが早くもこの季節、勢力図を広げている。
午後7時半、ド、ド、ド、ド、ドと一気に疲れが出てベッドで眠りこんでしまう。深夜の12時、電話で目がさめた。
体がおかしい。左手の中指と薬指がむくんで自由に曲がらない。力仕事を精一杯したもんなあ。誰の助けも借りなかった。
あの孤独な作業がこたえたのかも。神よ、私をもう一度、再生させたまえ。今日の“四字熟語”は家空っぽにする。
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